登場人物 ※すべて仮名です

  • 佐藤(キャリアアドバイザー)

  • 田中(看護師)

  • 山崎(介護士)

1. 地域医療構想と病床機能の変化

山崎「地域医療構想って、2025年くらいを見込んだ病床数が話題でしたよね。2026年度はどうなるんでしょうか?」

佐藤「厚生労働省『新たな地域医療構想の現時点の検討状況』(2024年11月)によれば、もし機能分化・連携が進まない場合、2025年に必要となる病床数は約152万床になると見積もられています。ただし、一般病床や療養病床の医療区分1患者について、在宅医療等で対応することを条件とすると、必要病床数を119万床程度に抑えうるという目標が示されています。引用元(mhlw.go.jp)」

田中「119万床というのは、機能分化が進んだときの予測ということですね。」

佐藤「その通りです。具体的には、①一般病床C3基準未満の患者を在宅医療等とする、②療養病床の医療区分1患者の70%を在宅医療等で、③療養病床の入院受療率の地域差を緩和する、という三つの仮定を置いての推計です。引用元(mhlw.go.jp)」

2. 医師の需給推計と偏在の課題

田中「医師不足はまだ続くのでしょうか?」

佐藤「厚生労働省の医師需給分科会報告 『令和2年医師需給推計』(2020年)では、全国マクロ的には医師の供給が需要を上回り、2022年には需要と供給が均衡する可能性があるとしています。引用元(mhlw.go.jp)」

山崎「でも偏在の問題は解決されていないのでは?」

佐藤「その通りです。医師数が全国的には足りる見込みでも、都市部と過疎地との間、診療科間での偏在は依然として大きいです。都道府県毎に“医師確保計画”を作成し、偏在指標を用いて目標医師数を定めるなどの対応が求められています。引用元(mhlw.go.jp)」

3. 看護職員の需給と復職・離職率の影響

田中「看護師の方はどう見込まれていますか?」

佐藤「厚生労働省の『看護職員需給推計にかかる研究』によると、2025年の看護職員需要数がシナリオによって約188万人〜202万人、供給見込が約175万人〜182万人と見られており、最大で約27万人の不足が想定されています。引用元(mhlw-grants.niph.go.jp)」

山崎「その差を埋めるにはどうしたらいいのでしょうか?」

佐藤「研究では、まず離職率の低減と再就業者数の増加が重要とされています。具体的には、全国の離職率を現行より10%未満に保つこと、潜在看護職員(資格はあるが就業していない人)の復職支援を進めることが必要とされています。引用元(mhlw-grants.niph.go.jp)」

4. 医療費・保険料率の動向と社会保障関係費の制御

田中「医療費は増える一方だという話もありますが、保険制度の負担はどうなりますか?」

佐藤「協会けんぽなどでは、保険給付費が高齢化と医療の高度化で継続的に伸びる見通しです。厚生労働省と財務省の間で、『社会保障関係費の伸びを高齢化の影響の範囲内に抑える』という方針が確認されており、2026年度の診療報酬改定や保険料率決定においてその制御が重要な論点となっています。(mof.go.jp)」

山崎「具体的には診療報酬改定でどのような項目が見直されますか?」

佐藤「診療所の機能強化加算、外来管理加算、地域包括診療料など、かかりつけ医機能を評価する制度の整理が議論されています。また、入院患者の室料自己負担化なども介護保険制度の考え方を参考に検討対象です。(mhlw.go.jp)」

5. 介護士の展望と介護人材確保策

山崎「介護士の方はどんな状況でしょうか?」

佐藤「厚労省のデータでは、要介護者数および高齢化率の上昇に伴い、介護保険サービスの利用量が増加する見込みです。そのためサービス提供体制を支える人材—特に介護士—の確保が急務とされています。具体的には処遇改善や労働条件の向上が検討されています。引用元(mhlw.go.jp)」

6. 医療提供体制の効率化と将来に向けての方向性

田中「病床を減らすとか、在宅医療を増やすとか、効率化への動きはありますか?」

佐藤「はい。病床機能の報告制度を使って、地域医療構想における必要病床数と、現実の病床機能とのギャップを把握する動きが進んでいます。たとえば2025年時点での目標は、病床全体の必要数を119万床程度に抑えることですが、これは在宅医療等を活用する前提が条件です。引用元(mhlw.go.jp)」

山崎「看護師や介護士の仕事のあり方も変わってきそうですね。」

佐藤「その通りです。タスクシフト/シェアの促進、多職種連携の強化、ICTの活用等が焦点になるでしょう。診療・介護の境界での役割分担もより柔軟になるでしょう。特に、在宅・施設・病院間の機能連携が重要です。厚労省の働き方ビジョンでも、そのような方向が示されています。引用元(mhlw.go.jp)」

7. まとめ

佐藤「公的データから見えてくる2026年度の医療制度・状況のポイントを以下に整理します。」

項目 公的データからの見通し
病床数・医療機能 地域医療構想による機能分化・連携を進めない場合、2025年に152万床が必要とされるが、目標として119万床に抑える可能性がある。引用元(mhlw.go.jp)
医師需給 全国マクロでは2022年に医師需給はほぼ均衡、将来的には供給過剰の可能性。ただし地域・診療科間の偏在は継続課題。引用元(mhlw.go.jp)
看護師需給 2025年には約188万人〜202万人の需要に対し、175万人〜182万人の供給で、最大約27万人の不足の見込み。引用元(mhlw-grants.niph.go.jp)
保険制度・財政 社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針。診療報酬改定で機能強化加算等を整理、保険料率の上昇も避けられない。引用元(mof.go.jp)
介護人材 要介護者増加に伴う介護サービス需要増。処遇改善、人材確保策が不可欠。引用元(mhlw.go.jp)
提供体制の変革 在宅医療等を含めた医療・介護の連携強化。タスクシフト・ICT活用。病床機能報告制度による機能転換の促進。引用元(mhlw.go.jp)