転職活動では「なんとなく知っているつもり」の用語が多く登場します。しかし、企業ごとに使い方が違ったり、法律上の定義と世間のイメージが違ったりする単語も多く、誤解したまま入社してミスマッチにつながることも少なくありません。
本記事では、厚生労働省の定義や制度をもとに転職希望者が間違えやすい言葉 を中心に、わかりやすく解説します。
もくじ
1. 勤務条件で混同されやすい用語
●「正社員」と「契約社員」
似ているようで大きく異なります。
正社員(無期雇用)
雇用期間の定めがなく、長期雇用を前提にした働き方。
契約社員(有期雇用)
契約期間が決まっており、更新は会社の判断による。
※厚生労働省では、有期契約者の処遇改善のため「無期転換ルール」を定めています。
出典:厚生労働省「無期転換ルール」
URL:https://www.mhlw.go.jp/
●「フレックスタイム制」と「裁量労働制」
SNSでも誤解されやすいポイント。
フレックス:働く時間帯を自分で調整できる制度
裁量労働制:成果に応じて働いたとみなされる制度で、実働時間に関係なく一定時間働いたと扱う
全く別物なので要注意です。
●「転勤あり」「勤務地限定」
求人票では小さく書かれているのに入社後の不満につながりがち。
転勤あり
将来的に全国・地域内での異動の可能性がある
勤務地限定
原則転勤なしだが、会社によって例外規定あり
2. 休み・働き方で間違えやすい用語
●「週休2日制」と「完全週休2日制」
実は意味が全く違います。
週休2日制:1か月のうち、週2日の休みがある週が1回以上
完全週休2日制:毎週必ず2日休み
出典:厚生労働省「働き方・休暇制度」
URL:https://www.mhlw.go.jp/
●「シフト制」と「交代制」
シフト制:勤務時間が日ごとに変わる働き方
交代制:役割ごとに時間帯を区分し、交代で勤務する仕組み(例:三交代制)
●「リモート可」と「フルリモート」
近年もっとも誤解が多いワード。
リモート可:出社と在宅が選べる場合が多い
フルリモート:完全在宅勤務
企業によっては「週3日は出社」といった条件がつくこともあるため、面接で要確認。
3. 給与に関する間違えやすい単語
●「基本給」「総支給額」「手取り」
似ているようで全く違う概念。
基本給:賃金のベースとなる額
総支給額:基本給+各種手当(残業手当・通勤手当など)
手取り:総支給から税金・社会保険料を差し引いた金額
総支給と手取りを混同してしまい、
「思ったよりもらえない」
という不満が生まれやすい部分です。
●「年収例」「想定年収」「モデル年収」
求人票では以下のように使われます。
年収例:実際の社員をモデルに算出
想定年収:残業や賞与を見込んで試算
モデル年収:勤続年数・役職を基にした参考値
企業によって基準が異なるため、何を元に算出した数字なのか確認が必要。
●「固定残業代(みなし残業)」と「残業代別途支給」
法律上、非常に誤解しやすい制度。
固定残業代
あらかじめ一定時間の残業代を給与に含める
→ 時間数を超えたら追加支給が必要
残業代別途支給
実際に残業した分だけ残業代を支給
固定残業代は制度自体は違法ではありませんが、
厚労省は 時間数の明示 を必須としています。
出典:厚生労働省「賃金のルール」
URL:https://www.mhlw.go.jp/
4. 雇用・契約に関する誤解されやすい用語
●「試用期間」と「研修期間」
試用期間:雇用する側が適性を判断する期間
研修期間:業務を覚えるための教育期間
試用期間中は条件変更がある場合もあり、契約書の内容確認が重要。
●「有期雇用」と「無期雇用」
有期雇用:期間の定めあり
無期雇用:期間の定めなし(=正社員とは限らない)
無期雇用だけど待遇は契約社員同等というケースもあるため注意。
●「業務委託」と「雇用契約」
転職初心者が最も間違えるポイント。
業務委託(フリーランス)
労働者ではなく、業務を請け負う立場。
社会保険・労働法の保護なし。
雇用契約
労働者として会社に雇われ、労働法の保護あり。
「業務委託=自由に働ける」と思って安易に契約すると後悔するケースも多いです。
5. 働き方・職種にまつわる間違えやすい言葉(看護師・介護士向け)
看護・介護業界では、一見似ている用語が多く、転職活動の場で誤解されやすいものがいくつかあります。特に「職種名」「働き方」「サービス形態」によるミスマッチは、入職後のギャップにつながる大きな原因です。ここでは、看護師・介護士の転職でよく混同される代表的な用語をまとめます。
●「看護助手」と「介護職」
名称が似ていますが役割は全く異なります。
看護助手:病院に勤務し、看護師の補助(ベッドメイキング・移送・清掃など)が中心
介護職:介護施設で生活支援を行い、食事・入浴・排泄などの介助が中心
医療行為の有無、働く場所、日常の業務内容が大きく異なるため注意が必要です。
●「訪問看護」と「訪問介護」
在宅系サービスの中でも最も混同されやすい言葉です。
訪問看護:看護師が自宅を訪問し、傷の処置・バイタル管理・点滴など医療的ケアを実施
訪問介護:介護士が生活援助(掃除・買い物)や身体介護(入浴・排泄)を行う
医療か生活支援かという根本的な目的が違います。
●「デイサービス」と「デイケア」
どちらも通所系サービスですが、機能が異なります。
デイサービス(通所介護):入浴やレクリエーションなど、生活支援が中心
デイケア(通所リハビリ):医師・療法士が関与し、リハビリテーションが主目的
利用者の目的に応じて職員の役割も大きく変わります。
●「夜勤専従」と「夜勤あり」
夜勤がある求人の中でも働き方に大きな違いがあります。
夜勤専従:夜勤のみに従事し、日中勤務はなし
夜勤あり:正社員として日勤+夜勤を含むシフトに入る働き方
給与体系・生活リズムが変わるため、応募前の確認が必須です。
6. 面接・選考で誤解されやすい用語
●「一次面接」「最終面接」
一次=役職者
最終=社長 or 役員
とイメージされがちですが、企業規模によって担当者はまったく異なります。
●「書類選考」と「職務要約」
書類選考:応募書類をもとに通過判断
職務要約:履歴書・職務経歴書に記載する簡潔な経歴の要約
特に職務要約は書類の通過率を左右する重要要素です。
●「内定」と「内々定」
内定:書面で正式に雇用を約束した状態
内々定:口頭での内定予定(法的効力は弱い)
厚労省は学生に対して「内々定」を企業が出すことを認めていますが、社会人の転職でも同様に使用されます。
出典:厚生労働省「就職活動に関するルール」
URL:https://www.mhlw.go.jp/
7. まとめ 用語理解が転職成功の第一歩
転職活動では、求人票・面接・契約書といったさまざまな場面で専門用語が登場します。
曖昧なまま理解してしまうと、入社後に「聞いていた話と違う」とミスマッチが発生しやすくなります。
今回紹介したのは、一般の転職者が特に誤解しやすい代表的な用語ばかりです。
働き方(正社員/契約社員/雇用形態)
休み(週休2日制/完全週休2日制)
給与(総支給/手取り/固定残業代)
リモートの定義
面接・内定のステップ
これらを正しく理解するだけで転職成功率は大きく上がります。